研究組織

計画研究A03

民族考古学と化学分析からさぐる生業活動の諸相
・研究代表者:細谷葵

本計画研究では、①長江下流域新石器時代遺跡から出土する、食料加工に使われた道具に付着した食物残滓の化学分析、②民族調査による、伝統的な食料加工法に関するデータ収集、を2つの柱とします。

①では、食料の煮炊きに使われた土器を中心に、そこに付着する食料残滓について、炭素・窒素同位体比分析、残存デンプン粒分析を行い、加工された食料の内容を復元します。これらの分析法は、近年開発がめざましく、多くの新しい成果が上がっているものです。また、土器のススコゲ付着パターンを分析することで、料理法の復元を行います。加えて、やはり食料加工には欠かせない道具であり、出土量も豊富な木器の分析を実施し、食料加工シークエンス全体の復元をはかります。これらの分析に基づいて、初期稲作期以降、コメが食用された割合や頻度、加工シークエンスにおける他の食料との関係、などに関する時間的変遷を明らかにします。そして、②の民族調査で得られる情報を参照、また他計画研究の成果を融合しながら、稲作導入による社会組織や世界観の変化にまで、議論を広げていきます。

②では、①で研究対象とする長江下流域はじめ伝統的な生活形態を残す地域において、参与観察、インタビュー調査による民族調査を実施します。調査では、伝統的な食料加工法、環境利用法について、特に加工のシークエンスや使用される道具といった物質文化の側面と、食料加工ルーティンと社会組織の関係性に着目し、考古学的な解釈への効果的な参照ができるようにします。このような視点からの民族調査は、中国ではまだほとんど実施されていないものであり、データベースとしても画期的なものになると考えられます。

これらの研究を、稲作は導入されたが集約的稲作を基盤とする社会が成立しなかった寧紹盆地と、稲作基盤社会が成立した太湖平原を比較する視点で展開することで、稲作社会成立の要因を考えていきます。

研究メンバーは、上記分析・調査について経験豊かなエキスパートを揃えました。

細谷 葵 (研究代表者) 研究の総括、伝統的な植物加工技術の民族調査
小林 正史 (研究分担者) 土器ススコゲ付着パターン分析
西田 泰民 (研究分担者) 土器付着有機物の脂質分析、残存デンプン粒分析
庄田 慎矢 (研究分担者) 土器付着有機物の炭素・窒素安定同位体分析
村上 由美子 (連携研究者) 食物加工具としての木器分析
楊 平 (連携研究者) 伝統的な環境利用法の民族調査
龍 春林 (海外研究協力者) 民族調査対象地域との仲介、情報提供